車や屋台に商品を積んであちこちを巡る移動販売。アメリカでは移動型アパレル販売の「ファショントラック」が盛り上がりを見せており、身軽な移動販売は今後日本でも増えていきそうです。そこでこの記事では本の移動販売を行うBOOK TRUCKをご紹介します。
以前SHOPCOUNTERでもご紹介した移動型アパレル販売のファッショントラックですが、アメリカではアパレルアイテムのみならず雑貨や本など様々なアイテムへと広がりを見せています。
そこで今回は2012年から本の移動販売を行っているBOOK TRUCKオーナーの三田修平氏にお話を伺いました!
2012年に開始したBOOK TRUCKは、バンに本を積んで公園や野外イベント会場などのスペースで本を販売する移動式本屋です。
場所や企画テーマにあわせて品揃えを変えるのが特徴で、普段あまり本を読まない人でも思わず手にとってみたくなるユニークな本が所狭しと並んでいます。
また移動式本屋だけではなく、6月ごろには常設店舗である三田商店のリニューアルオープンも予定。
出店場所選定のポイントとは?移動型のBOOK TRUCKと常設店舗である三田商店の役割の違いとは?など新しい本屋のカタチについて伺ってきました。
▲アイスブルーの車体が特徴的なバンは大人でもかがまずに入れるのでゆっくり好きな本を選ぶことができる。- なぜ”移動式本屋”というカタチで本の販売を開始されたのでしょうか?
私はもともと本を読まない人間だったのですが、大学時代に本の面白さに気づき、それからよく本を読むようになりました。
昔の自分と同じように普段あまり本を読まない人でも本を手にとってみたくなる、本の面白さに気づくきっかけになるような本屋を作りたいと思ったのがはじまりでした。
とはいえ本屋でお客様を待っていても普段本を読まない人に訪れていただくことは難しいので、公園やイベントなど人が集まる場所へ自分から出向いて本を販売する移動式本屋をはじめました。
せっかくいろんな場所に出店できるので、より興味をもっていただけるよう場所やテーマにあわせて毎回品揃えを変えるようにしています。
毎回出店の1ヶ月ほど前からテーマにあわせて本の買い付けをしていくのですが、その際は「マニアックになりすぎないこと」を大切にしています。
その理由は2つあって、まず1つは基本的に古書を在庫として抱えているので専門書や対象が限定的な本は汎用性が低く、そのイベントで売れなかった場合に不良在庫化するリスクが高いこと。
もうひとつはそのテーマを導入として”本”自体に興味をもっていただきたいという思いからです。
例えばバイクのイベントに出店したとして、訪れるのはバイク好きの方ばかりなのでバイクの専門書やツーリング関連の本については私より詳しい方がたくさんいらっしゃいます。
それではBOOK TRUCKが出店する意味がなくなってしまうので、あえてバイクが登場する小説やエッセイのような少し軸をずらした品揃えをして「本って面白いな」と思っていただけるような出会いを作りたいと考えています。
▲渋谷ヒカリエで開催された「五大陸書店」の様子。バンを使った移動販売以外にも、こうして商業施設内のイベントと絡めて短期間出店することも。- これまでにも様々なスペースに出店していらっしゃいますが、出店場所選びのポイントはありますか?
未だに出店してみないとわからないことも多いですが、これまでやってきて感じているのは「”人通りが多い”だけでは売上に繋がらない」ということです。
どんなに交通量が多い道路沿いでも、ただ通るだけの人ばかりではなかなか立ち止まってもらえません。
たくさんの人が集まるイベントでも、訪れる方が買い物以外の目的できている場合は同様に売上に繋がらないことが多いですね。
逆に予想していた以上に売れた場所もたくさんあるのですが、その違いは「お客様が買い物をするマインドできているかどうか」が大きいと考えています。
出店場所を選ぶ際には「人が多そう」「イベントテーマが面白い」という理由だけではなく、その場所にいらしゃるお客様の心の動きを事前にどれだけ想像できるかが大切なのだと思います。
普段やっているのは出店情報をFacebookに投稿する程度ですね。
BOOK TRUCKはその場に溶け込み、その場にいらっしゃったお客様へ本との出会いを提供したいと思っているので、多額のお金をかけて集客するといったことは考えていません。
逆に車体やコンセプトの珍しさからかお客様がSNSにアップしてくださることも多く、それが結果として宣伝になっているようにも感じます。
これまでは関東近郊を中心に出店してきましたが、車体を変えて燃費がよくなったので今後は地方への出店も計画しています。
あとは病院や老人ホーム、団地といった場所への出店にも興味があり、どう採算をとっていくかを考えています。
特に団地は子供の時に近所にきていた移動図書館がヒントになってBOOK TRUCKをはじめたという経緯もあり、ぜひ実現させたいですね。
子供がいる友人から「近所に本屋がないから駅前の本屋まで行きたいけれど、小さい子を連れて行くのは一苦労」という話も聞くのでニーズはありそうだと感じています。
BOOK TRUCKは変わらず、普段本を読まない人が本の世界に足を踏み入れるきっかけづくりを大切にしたいと考えています。
その場所やイベントにあわせて柔軟に見せ方を変えることで、気軽に立ち寄ることができるお店を目指していきます。
そうしてBOOK TRUCKをきっかけに本に興味をもってくださった方がより深く本の世界を楽しめる場所として、三田商店は『「わざわざ足を運びたくなる」店づくり』をしていきたいですね。
今後もBOOK TRUCKと三田商店を通して、より多くの人へ本に親しむ楽しさを届けていきたいと思います。
じっくり出店場所を検討できる常設店舗と異なり、ポップアップストアや移動販売は出店場所の決定を短期間の間に何度も繰り返さなければなりません。
ポップアップストア出店の際は特に「まず人通りが多いところに出店したい」と考えがちですが、インタビューにもあった通りそこに来る・通る人たちがどういった目的をもっているかによって売上は大きく変わってきます。
予想売上と実際の売上の乖離を起こさないためにも、自分自身がお客様の視点に立ち「どんな気分でその場所やイベントへ足を運ぶのか」を想像し考えることが出店の際には最も重要なポイントと言えそうです。
とはいえ人通りの多い場所は認知度向上を目的とした場合は高い効果が期待できます。
出店場所を選ぶ際は認知度を高めたいのか、売上を作りたいのか、まずは目的をはっきりと定めることで出店後の「失敗した!」を減らすことができるのではないでしょうか。
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